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平清盛と源氏の怨霊 江戸期の劇画・浮世絵

2010/03/09 No Comment

平清盛と言えば、日本史上最悪の暴君としてのイメージがあるが、それもそのはず。
清盛についての記述のある平家物語が確立したのは、一般的には鎌倉時代と言われていて、
源氏による天下が定まった後。
したがって、源平の合戦での敗者である清盛は、常に歴史上で悪者という風にされています。

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この歴史が本当に正しいのかどうがは不明、また、今回の記事内容にはあまり関係はないが、
この歴史観念によって数々の名画と呼ばれる劇画・浮世絵が誕生しているのは間違いのない事実。

今回紹介する劇画・浮世絵は、平家物語が題材になっています。
したがって、清盛にとってはおあつらえ向きですが、清盛が自分の殺してきた怨霊に苦しめられているものばかりです。
そういったものを意識的にチョイスしたのですが、それぞれの絵は凄く迫力のあるものばかりですので、
歴史的事実は置いといて、江戸期の絵画に浸って下さい。

怨霊に苦しめられる平清盛

歌川広重作 「平清盛福原にて怪異を見る図」
福原にて
平治の乱で勝利した清盛は、強引に福原遷都を実施。そんなある日の雪見の最中に、平時の乱で殺された武士の怨霊がドクロとなって清盛に襲いかかった。

豊原国周作 「清盛入道布引の滝遊覧の図」
豊原国周
福原近くにある布引の滝で、清盛の全快祝いの宴が催されていた中、突然、天候が急変し雷を伴う凄まじい豪雨に。清盛の家臣・難波常俊は、この雷に打たれて爆死する。爆死した難波常俊は、京都の六条河原で打首となった源義朝の長子・義平の介錯を行った人物。義平の首は、はねられた後も、「雷となって復讐せん!」と絶叫しながら、常俊の刀に噛み付いたという。

この場面は非常に有名で、豊原国周以外にも、歌川芳房や歌川国芳によっても描かれています。

歌川芳房作 「清盛布引滝遊覧義平霊難波討図」
歌川芳房
歌川国芳作「清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎」
歌川国芳

大蘇芳年作 「新形三十六怪撰・清盛福原にて数百の人頭を見る図」
yoshitoshi2
福原に都を移転させてからの清盛は、頻繁に幻影をみるようになる。常に自分の周りには自分が殺した者たちの怨霊や源氏の呪縛がつきまとい、神経が休まることがなかった。

大蘇芳年作 「平清盛炎焼病の図」
大蘇芳年
怨霊に取り付かれ、三日三晩悶え苦しんだ末に狂死する清盛。清盛以外には見えない亡霊に苦しめられ、「墓前に頼朝の首を!」という遺言を残して死んで行った。

清盛以外にも平家物語にはたくさんの怨霊が登場する

歌川国芳作 「百人一首の内・崇徳院」
崇徳院
保元の乱において、弟・後白河上皇との権力闘争に破れた崇徳上皇は、讃岐に流された。その間、仏教の写本をして京の後白河に送ったが、呪詛されているとして、破られた状態で送り返された。それを見た崇徳は怒り狂って自分の下を噛み切って、その血をもって全ての写本に「日本国の大魔縁となり、皇を取って民とし民を皇となさん」「この経を魔道に回向(えこう)す」と書き込んだという。その後、崇徳は後白河を呪詛しながら9年後に死んだと言われている。この百人一首には「瀬をはやみ、岩にせかるる滝川の、われても末に、逢んとぞ思う」という崇徳の激しく悲しい心情がうたわれている。

大蘇芳年作 「新形三十六怪撰、三井寺頼豪阿闍梨悪念鼡と変ずる図」
芳年
皇子誕生の祈祷に成功し、、園城寺の戒壇創設という恩賞にありつける筈だった頼豪(らいごう)。しかし、延暦寺の妨害によってその恩賞はなくなった。それを怨った頼豪は、100日間に渡る調伏の胡麻を行い、その間、髪も爪も切らずに気がつけば夜叉の形相に。そして、満願の100日目に疲労の為に絶命。その怨念が大鼡となって、仏像や経典を噛みちぎってしまう。

歌川芳員作 「源義経平知盛ノ霊ニ逢図」
歌川芳員
壇ノ浦で義経に破れ、海に飛び込み自害した豪傑・平知盛が、亡霊となって義経一行に襲いかかる。

歌川国芳作 「源義経大物沖にて難風に遭う」
国芳3
頼朝から逃げる義経に平家の亡霊が行く手を遮る。清盛は自分が殺してきた源氏に、義経は反対に自分が殺してきた平氏の亡霊に苦しめられることになる。

参考文献
魑魅魍魎の世界―江戸の劇画・妖怪浮世絵 中右 瑛 (著) 里文出版 2005-06
崇徳天皇 – Wikipedia
頼豪 – Wikipedia

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